ノットとは「釣り糸とルアー」や「釣り糸同士」の結合で使用する糸の結び方のことです。
正しいノットを組めるとオリジナルの仕掛けを作れたり、仕掛けをロストする確率を減らすことができるため、ノットはまさに釣りの必須スキルです。
そこで、本稿ではノットを締込む時にラインを濡らした場合に得られる強度の向上についてお伝えしたいと思います。
この記事ではノットを「濡らした場合」と「濡らさなかった場合」のライン強度を3パターンの結び方で比較しています。併せて、強いノットを組むコツ3選もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
- ノットがすぐに切れてしまうとお悩みの人
- ノットを濡らす事の効果を知りたい人
- 強いノットを組むコツを知りたい人
1.なぜノットを濡らすべきなのか
一般的にノットを組む時には結び目を湿らせてから締め込むと良いとされています。
それは、ノットを締め込んだ時に発生する摩擦熱からラインを守るためです。
釣りで使用されるラインは主に「ナイロンライン」「フロロカーボン」「PEライン」「エステルライン」の4種類です。
それぞれの特徴は次のとおりです。
ナイロンライン | フロロカーボン | PEライン | エステルライン | |
柔軟性 | ○ | × | ◎ | × |
耐摩耗性 | ○ | ◎ | × | × |
伸び率 | 約26% | 約25% | 約4% | 約21% |
耐摩耗性の高いフロロカーボンは素材が硬質なため比較的熱の発生が抑えられますが、ノットを組む時には非常に強い力で締め込むため、どのラインにも共通して摩擦熱が発生します。
特に、ナイロンラインはポリアミド・モノフィラメントという素材で作られており、この素材の耐熱温度は80℃〜140℃と言われております。
例え80℃にならなくてもこれに近い温度になるとラインは劣化しますので、ナイロンラインは特に意識的に濡らしたいところです。
なお、「ノットを濡らす」ことの本質的な目的は摩擦を抑えて熱の発生を少なくすることです。つまりノットを濡らすことが重要なのではなく摩擦熱を抑えるのが重要です。
ノットを濡らすためには海水でも川の水でも構いませんし、専用のスプレーを使用しても良いでしょう。
しかし、ノットを組むたびに水面に浸すのは面倒ですので、ラインを口で舐めるのが手っ取り早く個人的にはお勧めです。
2.ベースとなるライン強度
本記事ではラインそのものの強度を事前に測定しています。これをベースとなるライン強度と定めた上でノット締め込む時にラインを濡らした場合・濡らさなかった場合の強度を比較します。
なお、使用するラインは3号のナイロン、強度の測定にはドラグチェッカーを使用し、強度測定のばらつきを抑えるため5回測定しています。
まず初めに、ラインそのものの強度を測定した結果が以下となります。
回数 | 重量 | 平均値に対する割合 |
1回目 | 4.90 | 98.2% |
2回目 | 5.20 | 104.2% |
3回目 | 4.80 | 96.2% |
4回目 | 4.85 | 97.2% |
5回目 | 5.20 | 104.2% |
平均値 | 4.99 | |
標準偏差 | 0.174 |
以上より、平均的なライン強度は4.99kgです。
これを元にノットを「濡らした場合」と「濡らさなかった場合」の強度を3パターンの結び方で比較します。
3.ユニノット
ユニノットはバスフィッシングなどで多く使用されるノットで、安定した強度を得やすいほか、ラインとの相性はナイロン、フロロと良く、PE、エステルとはあまり相性が良くないという特徴を持ちます。
ユニノットの組み方
【検証】ノットを濡らさない場合・濡らした場合の強度
・ノットを濡らさない場合
回数 | 重量 | 平均値に対する割合 |
1回目 | 4.70 | 117.2% |
2回目 | 3.70 | 92.3% |
3回目 | 3.60 | 89.8% |
4回目 | 4.25 | 106.0% |
5回目 | 3.80 | 94.8% |
平均値 | 4.01 | |
標準偏差 | 0.410 |
ユニノットを組む時にノットを濡らさない場合の結束強度は4.01kgでありライン強度の80.36%です。
・ノットを濡らした場合
回数 | 重量 | 平均値に対する割合 |
1回目 | 4.80 | 98.2% |
2回目 | 4.80 | 98.2% |
3回目 | 5.05 | 103.3% |
4回目 | 4.65 | 95.1% |
5回目 | 5.15 | 105.3% |
平均値 | 4.89 | |
標準偏差 | 0.183 |
一方、ノットを濡らした場合の結束強度は4.89kgですのでライン強度の98.00%となります。
ノットを濡らさない時の結束強度は80.36%でノットを濡らした時は98.00%です。
強度増加率=98.00-80.36=17.674%
つまり、
ユニノットを組むときにラインを濡らすと約18%の強度増加が期待できます。
4.完全結び
完全結びは漁師結びとも呼ばれ、3本のラインを編み込むため高い強度が期待できるノットです。
ラインとの相性はナイロン、フロロと非常に良く、PEとはやや相性が良い、エステルとはあまり相性が良くないという特徴を持ちます。
完全結びの結び方
【検証】ノットを濡らさない場合・濡らした場合の強度
・ノットを濡らさない場合
回数 | 重量 | 平均値に対する割合 |
1回目 | 4.15 | 105.1% |
2回目 | 3.65 | 92.4% |
3回目 | 3.95 | 100.0% |
4回目 | 3.50 | 88.6% |
5回目 | 4.50 | 113.9% |
平均値 | 3.95 | |
標準偏差 | 0.356 |
ユニノットを組む時にノットを濡らさない場合の結束強度は3.95kgでありライン強度の79.16%です。
・ノットを濡らした場合
回数 | 重量 | 平均値に対する割合 |
1回目 | 3.95 | 91.9% |
2回目 | 5.05 | 117.4% |
3回目 | 4.25 | 98.8% |
4回目 | 3.55 | 82.6% |
5回目 | 4.70 | 109.3% |
平均値 | 4.30 | |
標準偏差 | 0.531 |
一方、ノットを濡らした場合の結束強度は4.30kgですのでライン強度の86.17%となります。
ノットを濡らさない時の結束強度は79.16%でノットを濡らした時は86.17%です。
強度増加率=86.17-79.16=7.01%
つまり、
完全結びを結ぶときにラインを濡らすと約7%の強度増加が期待できます。
5.パロマーノット
パロマーノットは非常に簡単な手順でノットを組めるため、多くのルアーマンに愛されるノットです。
ラインとの相性はナイロン、フロロと非常に良く、PEとはやや相性が良い、エステルとはあまり相性が良くないという特徴を持ちます。
パロマーノットの組みかた
【検証】ノットを濡らさない場合・濡らした場合の強度
・ノットを濡らさない場合
回数 | 重量 | 平均値に対する割合 |
1回目 | 4.75 | 99.6% |
2回目 | 4.75 | 99.6% |
3回目 | 4.65 | 97.5% |
4回目 | 4.85 | 101.7% |
5回目 | 4.85 | 101.7% |
平均値 | 4.77 | |
標準偏差 | 0.075 |
パロマーノットを組む時にノットを濡らさない場合の結束強度は4.77kgでありライン強度の95.59%です。
・ノットを濡らした場合
回数 | 重量 | 平均値に対する割合 |
1回目 | 5.10 | 104.5% |
2回目 | 4.85 | 99.4% |
3回目 | 4.50 | 92.2% |
4回目 | 5.05 | 103.5% |
5回目 | 4.90 | 100.4% |
平均値 | 4.88 | |
標準偏差 | 0.211 |
一方、ノットを濡らした場合の結束強度は4.88kgですのでライン強度の97.80%となります。
ノットを濡らさない時の結束強度は95.59%でノットを濡らした時は97.80%です。
強度増加率=97.80-95.59=2.21%
つまり、
パロマーノットを組むときにラインを濡らすと約2%の強度増加が期待できます。
6.強いノットを組むコツ3選
ここまではノットを組む時にラインを濡らす効果を紹介しましたが、ラインを濡らす事のほかにもノット強度を上げるコツがあります。
1.結び目はキレイに
ライン同士が重なったり不自然な場所に結び目ができてしまうとライン強度の低下を招きます。結び目をキレイにすることを心がけましょう。
2.締め込む時はゆっくりと
ラインを締め込むときに一気に締め込むと摩擦熱が発生し強度低下の原因となります。初めの方はあまり力を入れず、ゆっくり締め込むようにしましょう。
3.作業は正確に
巻く回数や通す方向など、定められた手順でノットを組まないと本来の強度を得られません。最悪の場合すっぽ抜けたり簡単な力でブレイクしてしまうので、作業手順は守るようにしましょう。
7.掛けた魚は必ずキャッチする
魚に針をかけた後にノットが原因でラインブレイクした場合、仕掛けは魚の口に刺さったままになります。最悪の場合その魚はすぐに命を落とすかもしれません。
自分のノットの甘さが魚の命を奪うということです。
ラインブレイクは魚体のほかにも環境へも悪影響を与えますので、釣人たるもの、掛けた魚は必ずキャッチしたいものです。
この記事で紹介したとおりラインを濡らすだけで2〜18%の強度増加が期待できますので、これまで「ノットを組む時にラインを濡らさなかった」という方はラインを濡らすことを習慣づけてみてはいかがでしょうか^^
最後までご覧いただきありがとうございました。
参考資料
・岸から狙える陸っぱり 海のルアー入門 株式会社学研プラス
・海も川もまずこれでOK! 釣り糸結び「完全」トリセツ 株式会社つり人社